どんな製品が求められているのか、どうすれば体に負担が少なく作業ができるのか……。
現場の声も聞きつつ、日々模索している製品開発担当者。今回は、女性向けの商品開発のため、
人間工学を応用し人の健康を考えた、支援機器の開発に取り組んでいる宇土博先生に、女性の体のバイオリズムをふまえ、
どんなものが体にフィットするのかお話しを伺いました。

足趾を動かすことでむくみを予防・軽減

吉成 足のむくみが及ぼす作業への影響はありますか?

宇土 長時間立って仕事をしたり、じっと座っているとむくみがきます。歩くと血流がよくなり、むくみも軽減されます。
 仕事のなかで、ちょっと動くことが大切です。血液は常に巡っていなければいけません。むくむということは、心臓への血液の流れが滞っているということで、心臓の負担が大きくなります。

吉成 多くの女性の悩みに、足のむくみがありますが、むくんだときにも適しているのはどのような靴でしょうか?

宇土 足趾が自由に動かせるような靴です。あまりぴったりしている靴だと、よりむくみます。足趾の動きを促進する靴がいいですね。

吉成 労働災害の一番大きな起因として、転倒災害があります。弊社では、転倒を防ぐべく、耐滑性にすぐれた靴を開発しています。耐滑性能があることで、転倒を防ぐ以外に女性が作業する上で優位に働くことがあるとすれば、どのようなことが考えられますか?

宇土 耐滑性がある靴では、相対的に歩幅が大きく、かかとから着地出来るので歩くスピードが上がります。それから、姿勢が前傾しないので足の負担が軽減されて疲れにくい、ということが言えます。

吉成 高齢化が進み、筋力の弱い高年齢労働者によるつまずき事故が増えています。つまずきにくい靴を開発していますが、男性と比べると筋力の弱い女性もつまずきやすいのでしょうか?

宇土 女性に特に多いことはなく、全般的につまずき事故が多くなっています。路面環境の問題と同時に筋力が低下して足が上がらないことも要因の一つです。長期的に見ると、筋力が強化されるような靴がいいですね。

首は集中力の源。負荷は出来る限り減らす

久野 ヘルメットの着用が体に及ぼす影響はどのようなものが考えられますでしょうか?

宇土 作業時に30°の頭部の前傾姿勢になると、頸には約3倍の負荷になるので、ヘルメットの重量が335gだとすると、だいだい1kgに相当する負荷になり、首や肩に負担が生じます。

久野 たとえば、重量が50g軽くなると負担の軽減に効果はありますか?

宇土 もちろん、軽いほうが首や肩への負担が軽くなります。各人、頸の伸展筋力は違いますが、成人で約3〜5kgくらいです。体への負荷は約8%以下が望ましいとされているので、ヘルメットの重量は400g以下が適正と言えます。
 ヘルメットの場合、負荷はすべて首にくる。前傾姿勢になると3倍の重さになると言いましたが、5kgの頭部が15kg、ヘルメットも0.4kgが1.2kgになります。首と肩に負荷がかかるので、特に女性はなるべく軽くする必要があります。

久野 いままで女性は、男性と同じヘルメットの内装を小さく調節してかぶっている方が多く、それでも大きいという声が多かったのですが、サイズのあわないものをかぶることによってどのような影響があるのでしょうか?

宇土 ピタッとしたサイズのものをかぶることが大切。大きなサイズをかぶると、それだけ重量負荷が増加することや、頭部を前屈するとヘルメットが前にずれてテコの原理で重量負荷がさらに大きくなります。サイズのあわないものをかぶっていると、そのうち首に影響が出ます。
 首は集中力の源で、最も大事な部分のひとつです。首は大事にしてください。真っすぐ立ったままの姿勢で仕事をすることはほとんどなく、下をむいて仕事をするわけですから、商品を開発する人は、使う人の仕事の姿勢をちゃんとみておかなければなりません。

一同 先生、今日は大変参考になる、そして楽しいお話しをありがとうございました。

宇土 商品開発は、その人の仕事や生活環境を知ることからはじまります。今日の話しを参考にして、これからの商品開発に生かしてください。

1979年 広島大学医学部大学院卒業。職業性頸肩腕障害の研究で医学博士。
1994年 カンザス州立大学・経営工学科人間工学教室に留学、同大学客員講師就任。
2000年 広島文教女子大教授就任、産業保健、福祉工学専攻。
2001年 広島大学医学部臨床教授。
2011年 日本新経絡医学会長。

友和クリニック
職業病外来で腰痛・頸肩腕障害、アスベスト塵肺、発達障害などの治療に携わる。
介護施設の腰痛予防やみかん農家の腱鞘炎予防などの人間工学的対策を指導。

有限会社ウド・エルゴ研究所
産業保健対策として、腱鞘炎予防のDr.Gripボールペン、
腰痛予防ベルト、VDT用アームレストなど多くの開発に携わる。