女性が使うユニフォームや安全保護具は、多くは“男性用の小さいサイズ”が主流でした。しかし、建設業界や運輸業界などで働く女性が増えているいま、動きやすさや安全性、使いやすさ、デザイン面からも普通の洋服と同じように女性用の製品が必須となっています。座談会では、現場での経験や環境をお聞きしつつ、どんな製品が求められているのか、建設業界の第一線で活躍されている、みなさまの生の声をお聞きしました。

司会・池田和吉(ミドリ安全㈱)
本日はありがとうございます。今日は「日本建築仕上学会 女性ネットワークの会」のみなさまにご協力いただき、現場での仕事や仕事環境、さらには建設現場で働く上で重要なユニフォーム、安全保護具についてみなさまのご意見をうかがいたいと思います。よろしくお願いいたします。最初に、なぜ建設業界に飛び込んだのか、いまの仕事に就いたきっかけをうかがいたいと思います。

子どもの頃からの夢、ものづくりへの探究心、
人との巡り会いでこの世界に

森嶋 私は建築材料の研究をする会社で研究補助をしていました。その材料をいろいろ調べているうちに、現場のものづくりをやってみたいと思うようになり、この業界に入ることを決めました。

針川 小学生の頃から設計の仕事をやりたいと思っていたので、大学でも建築の勉強をしました。建築士に憧れていたんです。

八巻 私はもともと化学に興味があったのですが、さまざまなご縁があり自分が勉強してきたことや知識を生かせると思い、いまの会社に入りました。専門が建築ではないので、建築士の資格をとるために通信大学で勉強中です。ちょっと留年しちゃってるんですけど……。がんばります!

熊野 最初は電線メーカーにいたのですが、もしかしたら建築業界の方が向いているのではと転職しました。研究職だったのですが、現場にも出てみたいという気持ちがあっていまの仕事に就きました。

永井 私は大学で建築を学び、最初は設計にいこうかなと思っていました。建築に進みたいという意識はなかったけれど、父が建築関係の仕事だったので影響を受けたのかな、とも思います。

コミュニケーションで人間同士の関係を築く

池田 みなさん、いろいろなきっかけで建築の世界に入られたわけですが、いままでの仕事の中でのやりがい、もしくは辛かったことなど何かエピソードはありますか?

熊野 職種が変わって転勤になったときが大変でした。ちょうどそのとき娘が中学3年生で受験生だったんですけれど、私が朝6時に家を出ることになったので、私だけでなく突然家族の生活パターンが変わってしまった。このときは大変でしたね。

八巻 建築業界で女性はまだまだ少数派。入ったときは若かったし、新しいことにチャレンジするのに障害があまりない気がします。みんなが使ったことのない材料を使ったり、少数派だからこそチャレンジしやすい環境にあると思う。誰もやったことのない仕事ばかりをやっていました。それをプレッシャーに感じたことはありませんでしたね。女性のほうがやってみなきゃわからない、と思ってやることができるのでは?

熊野 私もそうだった。まかせてもらえる仕事は、はじめは主軸ではない部分が多かったかもしれないけれど、それをチャンスに変えていくことが大事。

八巻 大変なところとしては建材が重いこと。自分の肩以上にあるものを上げ下げするのって大変じゃないですか。それが男性との身長差で、一斗缶が自分の頭より高い場所に置いてあったりすると、その出し入れがもう必死でしたね。男性はいつも通り普通にやっていることだと思うんですけど、“職場のバリアフリー化”が必要というか。女性の身長と体力でも使いやすい場所に置き場所を変えるなど、細かいことに気付いてもらえるように、お互いの配慮が必要だと感じました。腰を痛めて退職してしまった女性もいるので。この業界ならではの悩みかなと思いますね。

針川 入社2年目に新築工事の部署に移動になって、現場を巡回しているとき、いきなり職人さんから「女性とは仕事をしない」と言われたことがあって。それは今でも記憶に残っています。でも、話してコミュニケーションをとるうちにすごく仲良くなった。あだ名で呼んでくれたり。実はやさしい人だったんです。その頃は特に女性が少なかったので、抵抗があったのかも。

熊野 気を引きたかったとか(笑)。いまは、女性が来るというだけでいい意味で緊張が走りますよね。職人さんたちが張り切る。

森嶋 職人さんたちのテンション上がりますよね。何でこんな雰囲気が違うんだろう、っていうぐらい。やる気になるんでしょうね。私としては、女性が多い職場より男性が多い職場のほうが自分の性格的にも働きやすくて、合っているような気がしています。女性があまりやらない仕事をやってみたいというのもありました。お客さんから怒られることもいっぱいありましたけど、手配ミスしたら1日で何百万の損失が出る可能性もある仕事なので、日々緊張感を持ちながらやっていることがやりがいに繋がっているのかな、と思います。

熊野 以前、女性ネットワークの会で職場環境などについてのアンケートをとったことがありました。その中の、男女差を感じることがあるかという問いで、感じることがあると答えた人のなかで、女性に甘いと感じることがある、という回答が多かったです。そのあたり、男女の感じ方の違いがあるのかも。

森嶋 私なんて、しょっちゅう怒られていますけど(笑)。でも、怒られながらもいろいろとノウハウを掴みたい。失敗するからこそ、その失敗を生かして次はどうしようかと考える。そこから次に繋がるんだと思います。

永井 私の場合、女性だからという認識はあまりありませんでした。でも、最初材料のクレームのフォロー説明で現場に行ったとき、「女が来たか」と言われました。特にクレーム対応だったので、みんながピリピリしてるときでしたけど。その後、材料の説明をしたらそんなふうに言ってきた方に「説明でよくわかったよ。ありがとう」と言われました。きちんと説明をして理解してもらえれば、必ず仲良くなれると思います。

about 日本建築仕上学会 女性ネットワークの会

「日本建築仕上学会」とはすべての建築仕上げに関連する人たちが集まる学会。
個人会員は約300名。女性が現場に出ることも増え、女性同士の横のつながりが必要、ということで発足しました。
現在運営委員は10名。女性ならではの挑戦をして、能力を発揮できるような場にしていきたい。

  • 熊野康子さん

    ㈱フジタ 建設本部 技術部
    女性ネットワークの会主査

    入社28年。建築技術の指導、現場のサポートを行なう。小さなことでも“継続は力なり”がポリシー。

  • 永井香織さん

    日本大学 准教授 生産工学部
    日本建築仕上学会 理事

    研究は材料施工専門。テーマは超高層の大規模修繕など。学生には建築の楽しさや厳しさを教えたい。

  • 八巻志帆さん

    水白建築設計室
    カラーコーディネーター2級

    マンションの大規模修繕の設計と施行を担当。この仕事について3年目。仕事も遊びも毎日真面目に楽しくやる、がモットー。

  • 針川優子さん

    ㈱マサル 第1営業部
    2級建築施工管理技士

    入社10年目。仕事は新築工事のシーリング施工管理。何事も“メリハリ”が大切だと思っている。

  • 森嶋順子さん

    トーヨー科建㈱ 工事営業部
    一級建築施工管理技士

    仕事は改修工事全般。現場に出てからあっという間に15年。モットーは“努力は嘘をつかない”!

ミドリ安全では、現場で働く女性の意見を参考に
商品開発を行っています。